ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件の「馬込政義」とは
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件(ルネサンスさせぼさんだんじゅうらんしゃじけん)は、2007年12月14日、長崎県佐世保市名切町のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」で起きた銃乱射事件である。スポーツクラブ会員の男がクラブ内で散弾銃を11発発砲し、男女計2人を殺害、6人に重軽傷を負わせた。この事件の後、犯人は自殺。この事件では銃規制の不備が指摘され、翌年銃刀法が改正された。
事件詳細
14日午後07時10分頃、容疑者は迷彩服の上下に銀色のダウンジャケットを羽織り、黒い目出し帽に白いフルフェイスのヘルメット、手に散弾銃1丁、背中に散弾銃と空気銃(いずれも所持許可)を2~3丁背負った姿でスポーツクラブの正面玄関から入る。容疑者に招待され、指示通りプール脇のギャラリーで待っていた友人の藤本勇司さんが、容疑者を見つけて「オス」と手を挙げた途端、発砲。藤本さんはギャラリーを逃げ出したところで至近距離から数発撃たれた。
同じく容疑者に招待されたもう1人の友人(37)はスタッフに「会員と一緒でなければ入れない」と言われ、エントランスホールで容疑者を待っていたのが幸いして無事だった。容疑者はこの友人に気づかず、目の前を通り過ぎた。この友人は藤本さんとは面識が薄かったとこのこと。
容疑者はスイミングスクールが行われていたプール(14~15人の子供たちがいた)で2~3発、発砲。
水泳インストラクターの倉本舞衣さんは、水着姿で子供たちを誘導し、ラウンジから事務所を回り込んで正面玄関へ向かったが、事務所に居たマネージャーの男性が、進入経路を戻った容疑者が正面玄関付近に現れたのを発見、「逃げろ」と叫んで倉本さんらをラウンジ方向へ戻るように指示。反転して逃げた子供もいたが、倉本さんと数人の子供はマネージャーの居る事務所に逃げ込み、机の下に隠れるなどした。そこへ事務所に入ってきた容疑者が倉本さんに向けて至近距離から数発発砲した。
容疑者が事務所を出た後、机の下に隠れていたマネージャーと子供たちは反対側のドアから事務所を脱出。2階のロッカールームへ行き、「ロッカーに入るんだ」と子供たちに指示。そこで息を潜めて隠れた。
容疑者がクラブ内のどこを通って逃走したかは不明。
15日未明、スポーツクラブから5キロほどのところにある、佐世保市船越町のカトリック教会前で容疑者が逃走に使ったワゴン車を発見。中から散弾銃2丁と空気銃1丁(いずれも所持許可済み)、実弾2500発が見つかった。
午前05時44分、教会から1発の銃声が聞こえる。
午前07時35分、教会敷地内で血を流して死亡している容疑者を発見。迷彩服姿の遺体のそばには散弾銃1丁も見つかり、状況は自殺と思われる。
死亡後発見された容疑者は、迷彩服の下に防弾チョッキを着込み、黒のブーツを履いていた。またベストのポケットには散弾180発が入っていたとのこと。
教会付近では迷彩柄の布がかぶせられた鉄製ヘルメット、黒い目出し帽、黒い射撃用ベストが落ちており、容疑者の物と見られている。
犯人(馬込政義容疑者)について
事件を起こした馬込は1970年、佐世保市内で生まれた。両親が熱心なカトリック信徒で馬込は、両親が通う協会で、生後間もなく洗礼を受けている。
温厚という評価がある反面黒ミサに興味を示していたという情報もある。
佐世保工業高校を卒業してからはいろいろな職を転々とし弁護士を目指して司法試験にも挑戦したりしていた(司法試験には4年連続で不合格)。
2002年頃から銃を所持し始める。
2007年までに散弾銃3丁と空気銃1丁を購入
いずれも警察に届けている。
合法的に銃の所持をしているが奇声や奇行も見られ
夜中に突然トイレを貸して欲しいと尋ねられた住人は馬込の銃所持許可取り消しを警察に求めていたほど。
(馬込は警察の自主的な提出要請には応じていない)
事件を起こしたルネサンスの会員で週に3~4回程通っていたがその後ほぼ毎日通っていた。
定職を持たずに収入のない馬込が頼ったのは父親の退職金だったが母親に生活費の援助を打ち切られていた。
馬込容疑者は両親と妹、弟の5人家族。地元の中学を卒業後、佐世保工業高校、県外の大学に進学したが中退し、電気会社に就職したがまもなく退社、地元の病院で看護師見習いをしていたという。しかし、6~7年前に病院を辞めてからは無職になり、知人は「このころから少しおかしくなったように思う」。自宅の離れにこもりがちになるなど、人を寄せ付けない雰囲気になり、教会にも年に数えるほどしか姿を見せなくなった。
大音量で音楽をかけたり、銃を手に漫然と出歩いたり、迷彩服を着て釣りに出かけるなど、奇行のような行動が目撃されるようになったという。 市役所に勤めていた父親の退職金で乗用車を買い、夕方になると外出。近所の人は「4、5年前、深夜2時ごろに馬込容疑者に自宅の呼び鈴を鳴らされた。玄関に出ると『トイレを貸してほしい』と言われた。同じことが2度ほど続いた」。このころ、馬込容疑者は「近所の人があちこちで悪口を言うから就職できない」と周囲に漏らしていたという。
馬込容疑者の母親と親交があったという女性は「精神的に不安定で通院していると聞いた。最近顔を合わせたときは目がつり上がっていて恐ろしかった」と話していた。
平成14年に散弾銃の所持許可を取り銃を購入。地元の射撃団体に入り、クレー射撃などにのめり込むようになった。近くの主婦(43)は「散弾銃を持ち歩いていて怖かった」と話し、近所の住民が警察に相談することもあったという。
出典:佐世保銃乱射事件
事件より前、容疑者は友人に「スポーツクラブに見学に来ないか」と誘っていた。容疑者から友人へのメール(原文のまま)
おは。また、後で電話するばってん、明日の楽な待ち合わせ方法を、メールしておきます。
俺の無料駐車券があるので、車でそのままルネの駐車場に入り、どこか適当にとめる。階段か道なりで建物の入り口に入る。すぐフロントなので、俺の名前を言えば、入れる様にしておくから入る。奥に歩いて行くと、スカッシュコートの横に階段があるので、1F分登る。もう一つ上は、テニスコートなので違う。正面にプールの見える椅子がいっぱいあるので、楽にして待つ。以上。文章は長いけれど、中身は少ないので、落ち着いて読んでね。
14日午後1時49分、事件の5時間半前に容疑者は一度スポーツクラブを訪れていたことがスポーツクラブの記録から判明。その時は服装など、特に異常を感じるものではなかったようだとのこと。クラブに防犯カメラは設置されていない。事件前日の13日、容疑者はスポーツクラブに「あす3人の見学者がくる」と伝えていた。
容疑者は、当日もしつこく電話やメールで友人を誘っていた。
自殺の容疑者、友人らに誘い出しメール
長崎県佐世保市で起きた散弾銃乱射事件で、自殺した無職、馬込政義容疑者(37)が事件前、中学・高校の同級生の友人らを現場の「ルネサンス佐世保」に来るように携帯のメールなどで執拗(しつよう)に誘っていたことが分かった。前日の13日にはルネサンスに電話をかけ、死亡した藤本勇司さん(36)ら3人について体験や見学の予約をしていた。同級生の男性(37)は「僕らを道連れにしようとしたのだろうか」。誘い出された友人らは恐怖の瞬間を振り返った。この男性によると、馬込容疑者からメールを受け取ったのは13日午前8時46分だった。「正面にプールの見える椅子がいっぱいあるので、楽にして待つ(待て)」などの内容で、馬込容疑者はルネサンスに到着してからの行動についても詳細に指示していた。さらに13日の昼過ぎに今度は電話があり、「行けるか?」と念押しされたという。
事件の約40分前に、男性はルネサンスに到着。しかし、職員から「会員と一緒でないと中には入れない」と言われ、フロント付近で待っていたところ、迷彩服に身をつつんだ身長180センチほどの大きな男が入ってきた。男性は、この男は外国人に見えたという。
「バン、バン、バン」。数分後、館内には大きな銃声が響いた。怖くなった男性はあわててフロントから駐車場に戻り、車で屋外に出ようとした。しかし、駐車場の出入り口で警察官から外に出ないように言われ、現場にとどまったという。
大きな音はすぐに銃声と分かった。男性は瞬間的に馬込容疑者の顔が浮かんだ。携帯電話で連絡を取ろうとしたがつながらず、不吉な予感がしたので、近くの公衆電話から馬込容疑者の自宅に電話をかけた。
応対した母親から「(馬込容疑者は)『仕事の面接がある』と言って午後4時ごろに外出した」と知らされたが、不安は募るばかりだった。男性は「今にして思えば、あれが馬込だった。友だちも少なく仕事もなくて、あいつはきっと寂しかったのだろう」と振り返ったが、「でも許せない」と怒りを込めた。
出典:佐世保銃乱射事件
長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件で死亡した藤本勇司さん(36)の弟重利さん(34)は15日、同市の自宅前で取材に応じ「馬込政義容疑者と兄は親友の仲だった。どうしてこんな事件になったのか、全く思い当たるふしがない」と首をひねった。週1回は藤本さん宅に馬込容疑者が遊びに訪れたり、一緒に釣りに出かけたりしていた。事件前日の13日、2人は昼食をともにしたという。
重利さんは「学生時代よりは、社会人になってから親しさが増したようだ。兄は馬込容疑者のことを『いいやつだ』と言っていた。その相手に、こんなひどい殺され方をするとは…」と話した。
出典:佐世保銃乱射事件
被疑者が自殺したため、動機の解明は難航した。当初は無差別殺人かと思われていたが、事件時たまたま客としてプールにいた、女性インストラクターの交際男性を押しのけ、他の人に目もくれず女性インストラクターを狙撃していることから、警察は最初から女性インストラクターを計画的に狙った犯行と断定した。被疑者は数年前からルネサンス佐世保でウェイトトレーニングをしており、殺害された女性インストラクターに一方的な恋愛感情を抱いていたと見られている。殺害された36歳男性は、被疑者とは中学時代からの親友であり、被疑者にスポーツクラブに呼び出されて被害に遭った。被疑者はこの男性の他にも複数の旧友をスポーツクラブに誘っており、2階のプールを見下ろせる3階のギャラリーに行くよう携帯メールで指示していた。しかし、呼び出された男性たちは会員でないことから、3階のギャラリーに行くことができず2階のロビーで被疑者を待っている間に発砲事件が起き、事件に巻き込まれた。
36歳男性射殺の動機について、警察は、男性が犯行を制止しようと試みたことに犯人が激昂したものと断定した。後に36歳男性の制止行為は警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律[9]第2条が定める協力援助行為と認定され、遺族に給付金が支払われた。
警察は、被疑者が仕事に就けず借金返済もできなくなったことなどから、「自暴自棄となり犯行に至った」と結論付けている。しかし、好意を寄せていた女性インストラクターに対し殺意を抱くに至った理由や旧友たちをスポーツクラブに呼び出した理由については、明確な答えを出せていない。
動機について学者から様々な説が出ている。犯罪精神医学者の影山任佐は「まず自殺を考え、最後に『人生の見せ場』を作ろうとしたとみるのが自然」と指摘した。犯罪心理学者の福島章も自殺願望に言及し、「社会や周囲への被害妄想を抱くようになり、多くの人を道連れに死のうとしたのではないか」と語った。
銃規制
この事件では、生活が破綻していた被疑者が銃を合法的に所持していたこと、その奇行から近隣住民が警察に銃所持許可の取り消しを再三求めていたにもかかわらず特に対策が採られていなかったことから、法体制や所持審査のあり方が問われた。佐世保市の市長と市議会は、銃の許可に際しチェックを強化するよう政府に意見書を提出している。町村信孝内閣官房長官は、「日本は銃器規制が世界一厳しい国であるといわれているが、現実にこういう事件が起きた」と述べ、事件を検証した上で反省点や改善点を探っていく考えを明らかにした。警察庁は全ての銃保持者に自主的な委託保管を呼び掛けた。また、関係機関の連絡会議で自主的な規制や指導を強化する方針が確認されたが、害獣駆除や射撃競技などの必要性から画一的な銃規制に慎重な意見も出された。
銃規制強化の動きは野党にも見られ、民主党は12月26日、銃の保管場所を原則自宅から警察署等に変更する方向で法改正を検討していることを明らかにした。2008年4月25日、銃刀法の改正案が民主党から参議院に提出された。その後秋葉原でダガーナイフを用いた通り魔事件が起きたことを受けて、ナイフ規制拡大を盛り込んだ改正案が政府から提出された。与野党の協議の末、2008年11月28日改正銃刀法が成立し、2009年1月5日施行された。改正銃刀法では銃所持資格が28年ぶりに見直され、ストーカー行為、家庭内暴力、自殺の危険性がある者などが欠格事由に加えられた。銃と実包の保管場所については従来通り自宅を原則としている。
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