姫路2女性バラバラ殺人事件を起こした「高柳和也」とは
姫路2女性バラバラ殺人事件
姫路2女性殺人事件(ひめじ にじょせい さつじんじけん)とは、2005年1月9日に日本の兵庫県姫路市で発生した2女性殺人・死体損壊事件である。
2005(平成17)年1月9日、「ウエダコウイチ」こと高柳和也が、畠藤美佳(23)と谷川悦実(23)の2人を殺害。高柳は2人に薬物を飲ませて殺害。遺体はバラバラに解体され、肉は山に、骨は海に捨てられた。事件の実体を知らない被害者の両親が姫路警察署に捜索願を出す。だが警察の対応は、「年間1200人もの捜索願が出ているので、いちいち相手にできない」というものだった。
両親は、娘の美佳のマンションには現金などが残っていたため、単なる家出ではないと考え、連日姫路警察署を訪れ捜索を依頼。
それに対し、担当の警察官は電話機を両親にむかって投げつけたり、書き込む欄がいっぱいになったとの理由で、調書を取るのをやめてしまったという。
娘が行方不明になって13日目、殺害の事実をこの時点ではまだ知る由もない美佳の両親は、知人から定年を目前にひかえた現職警官の飛松五男を紹介された。飛松は元刑事で、1月28日には「ウエダコウイチ」と名のった男の自宅と本名が高柳和也であることをつきとめた。そして、1月29日にまで張り込み、姫路警察署にその後を託した。
先に記述するが、実はこの事件の被告を発見し捕まえたのは警察ではない。被害者の両親と個人的立場で協力した、捜査畑36年のベテラン巡査部長・飛松氏による前代未聞の逮捕劇へと繋がってゆくのである。
行方不明から19日目、美佳の両親と姫路警察署員2名が高柳和也宅へ。
任意の取調べのため生活安全課の高井統括係長が1人で家の中に入る。そこには1人の女性がいたそうだが、畠藤美佳ではないとして帰ろうとする。そこで美佳の母親が家の中へ入れてもらったところ、異臭がただよい、ただならぬ状態であることを直ちに察したという。
そして、室内にはスタンガン等の拘束器具や薬物が散乱しており、カーペットの血痕を見つけ、しかも女性の意識がもうろうとしていたのだそうだ。当然母親は、警官に再度、室内を調べるよう依頼。
ところが、再度、室内に入った生活安全課の高井統括係長は「異常なし」として、その場を立ち去ってしまった。
そこで両親は飛松五男を現場に呼ぶ。現場に到着した飛松は、高柳の口の中から甘い臭いがしたため、「覚醒剤をやっているな」と追及。そこで高柳が覚醒剤を服用したことを認めたため、18:30ごろ所轄の相生警察署に連絡。20:00、相生警察署員が現場に到着して高柳を任意同行。
1月30日、高柳和也を覚醒剤取締法違反で逮捕。
しかし、ここからも更に警察側は、常識を逸した非道極まる対応が続く。
美佳の両親が高柳和也の母親の許可を得て室内を探すと、血のついた美佳のネックレスや財布等を発見。しかし姫路警察署は、畠藤美佳らの失踪(行方不明)事件とは関係ないとし、「畠藤美佳は生きており、風俗店で働いているので、帰ってきたらあたたかく迎えてほしい」と事実無根の情報を両親に伝えているのだ。
しかも兵庫県警の捜査一課長である山崎は何の根拠もなくマスコミに、被害者である畠藤美佳は風俗で働いていると伝え、一部マスコミがそれを発表してしまったのだ。
報道によれば、この件については全く何の根拠もなく両親に伝えたことを姫路警察署は認めているが、極めて許し難い経緯だ。
4月12日、高柳は、畠藤美佳と谷川悦実の2人を殺害を認めた。「1月9日夜、自宅でハンマーを使って2人を殺害した。遺体を切断して、海と山に捨てた」などと供述していた。5月10日、兵庫県警は高柳和也を死体遺棄容疑で再逮捕。5月20日、兵庫県警は高柳和也を殺人容疑で再逮捕。
出典:高柳事件
経緯
2005/01/09 兵庫(相生市)姫路2女性バラバラ殺害事件2005/01/04 ウエダユウイチと畠藤未佳(はたふじみか) 和歌山旅行
2005/01/08 ウエダユウイチこと高柳和也 畠藤宅訪問
2005/01/09 畠藤未佳(はたふじみか)さん行方不明.警察動かず
2005/01/22 両親 自力捜査開始<知人のつてを頼り兵庫県警元刑事の飛松五男氏に家族が記録として残していた、失踪前娘が自宅に連れてきた39歳の男の調査依頼.飛松は男の居所を突き止め、張り込むのと同時に姫路警察署に通報>
2005/01/29 自宅軟禁別の女性発見.姫路警察署 生活安全課統括係長 室内に女性会社員がいないと帰ろうとする(スタンガン、異臭、カーペット血痕、壁血痕(判別せず)、意識がもうろうとした女性を無視<係長は犯人蔵匿罪にあたる(大阪地検前田事件参照)>)...で、調査を頼んでいた兵庫県警元刑事の飛松五男さんを呼び、相生警察署へ通報、1時間半後に相生警察署が駆けつけ任意同行...
2005/01/30 高柳和也逮捕(覚せい剤取締法違反)
姫路署生活安全課、風俗勤務で生きている と家族とマスコミに吹聴
2005/05/10[兵庫県警]男を死体遺棄容疑で再逮捕.05/20殺人罪で再逮捕.遺体の一部発見.
遺骨、肩と腰のみ.頭部などの遺体は未発見.殺害日時不明
高柳和也 2女性の殺人、死体損壊、死体遺棄容疑で起訴.
2005/12 姫路警察署は職務怠慢を遺族に謝罪
裁判焦点
殺人他の追起訴後に開かれた2005年8月11日の公判で、高柳被告は姫路市の女性殺害について「かみそりを持ってきた女性ともみ合いになり、とっさにハンマーで殴ったが殺意はなかった。そこを目撃した女性には殺意を持ったが、殴ったのは一度だけ」と殺意を否認した。9月21日の公判で弁護側は、会社員女性の殺人について「殺意はなく傷害致死事件」とし、「相手が襲いかかってきたもので、正当防衛が成立する」と無罪を主張した。
その後、高柳被告は遺体を遺棄したとする詳しい場所などを示した上申書を提出。2007年2月21日の公判で証拠として採用され、五十嵐裁判長は「信用性は別として、壺根港の捜索をしてもよいのではないか」と述べた。検察側は「警察と相談の上、検討する」とした。兵庫県警は3月下旬に相生湾の壺根港を捜索し、頭部以外の人骨片数十個を引き上げた。県警のDNA鑑定の結果、骨は2人のものと分かり、6月5日の公判で検察側はDNA鑑定結果を提出した。
しかし、高柳被告が弁護団全員を解任したため、公判は長引いた。
2008年9月16日の論告求刑で検察側は「極めて自己中心的な残忍かつ悪質な犯行で、各遺族の処罰感情も極めて峻烈だ」と断じ、「殺意をもってハンマーで多数回、頭部などを殴打したのは明らか」と指摘。「他害的性向の根深さは甚大」とした。
11月18日の最終弁論で、弁護側は「犯行は計画性がなく偶発的だった。死刑は回避すべき」などと訴え、無期懲役刑で40年以上服役した例もあるとして死刑回避を求めた。弁護側は「被害者から金銭を要求され、もみあいとなり、とっさにハンマーで頭を一回殴った」と殺意を否定。もう一人は「犯行を目撃され、発覚を恐れて偶発的に起きた」とした。高柳被告は「二人に謝りたい。遺族に深い傷と悲しみを与えて申し訳ない」と謝罪した。
判決理由で、五十嵐裁判長は犯行動機については、「自分が資産家であるとのうそが発覚すれば報復されると恐れていたところ、女性から髪をつかまれたことで激高し、犯行に及んだ」と認定。「動機は極めて自己中心的。二人の尊い命が奪われ、結果は重大。罪を軽減しようと供述を二転三転させるなど、罪を償う意識が乏しい」と指摘。さらに「被害者らの受けた肉体的苦痛はもとより、恐怖感、無念さには想像を絶するものがある」などと述べた。また弁護側の正当防衛の主張に対しては、「(被害者が)カミソリで襲いかかった形跡はなく、殺害現場の跡などから二人の頭部をハンマーで数回にわたって殴るなど強い殺意が認められる」と退けた。また弁護側の偶発的な犯行という主張については、「計画性が認められないことを過大に考慮できない」と述べた。そして「犯行様態は極めて残忍で、凶暴かつ残忍極まりない。遺族の処罰感情も厳しい。犯行の重大性を真剣に受け入れようとせず更生の余地は乏しい」と断じた。
2010年2月3日の控訴審初公判で、弁護側は知的障害が判明したとして、心神耗弱を主張、精神鑑定を申請。さらに、2人の殺害順序が違うと主張する、被告自身が書いた控訴趣意書を提出した。さらに「突発的な犯行で計画性はなかった」とも主張した。公判には高柳被告も出廷した。これに対し、検察側は「いずれも理由がない」と控訴棄却を求めた。
後に精神鑑定は却下された。
判決で湯川裁判長は交際をめぐるトラブルがあったことを指摘し、「動機は理解可能で、犯行後、被害者に連絡を求めるメールを送るなど(生存を装う)工作もして証拠隠滅を図るなど犯行の社会的意義を理解していた。完全責任能力が認められる」と弁護側の主張を退けた。そして「確定的殺意に基づく残忍な犯行で、一審判決は不当とは言えない」と指摘した。
2013年10月3日の最高裁弁論で弁護側は「被告は知的障害を抱えており、責任能力に疑問が残る。一、二審は被告の責任能力などの評価を誤り、量刑も重すぎる」と主張した。検察側は「基礎学力は乏しいが責任能力には問題ない。残忍な犯行で極刑が相当」と訴えた。
判決は「強固な殺意に基づく凶暴かつ残忍な犯行。身元判明を妨げようと2人の遺体を徹底的に解体して海中に投棄しており非人間的で残虐だ。被告は不合理な弁解に終始しており、真摯な反省はうかがえない。計画性がないことを考慮しても、被告の刑事責任は極めて重大で、死刑判断は認めざるを得ない」と述べた。
備考
本事件では、会社員女性の両親が姫路警察署に捜査願を提出したが、警察は全く動こうとしなかった。両親は知人から紹介された現職警官の巡査部長に相談。巡査部長は独自に高柳被告を発見し、姫路警察署にその後を託した。しかし2005年1月30日に高柳被告の自宅を任意捜査した姫路警察署員は、家の中に入るもすぐに帰ろうとした。女性の母親が部屋に入り、拘束器具や薬物、さらに血痕を発見。中にいた女性の意識が朦朧としていたことも含め、署員に訴えたが、署員はそのままその場を立ち去った。そのため母親は巡査部長を現場に呼んだ。巡査部長は高柳被告の口の中から覚せい剤の臭いをかぎ取り、追求し認めたため、所轄の相生警察署に相談して、ようやく高柳被告は逮捕された。しかしその後も、姫路警察署は両親にまともな対応をしなかった。さらに兵庫県警の捜査一課長は、実際とは異なるのに被害者二人を風俗嬢と決めつけ、一部マスコミに情報を流していた。後に署は職務怠慢を遺族に土下座謝罪した。高柳和也被告は交通事故で、主婦とその娘を死亡させて実刑判決に処された前科がある。
専門学校生の父は高柳和也被告に慰謝料や逸失利益など約5000万円の損害賠償を求めた。2006年7月10日、神戸地裁姫路支部(田中澄夫裁判長)は、高柳被告に約3800万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
殺害された女性の遺族は、発見されていない頭部の遺棄場所を問う書簡を高柳被告に2013年11月28日付で送った。高柳被告からは12月上旬に返書があったが、大まかな返答しかなかった。
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