スポットライト 世紀のスクープ
映画『スポットライト 世紀のスクープ』公式サイト。2016年4月15日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
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スポットライト・世紀のスクープ「レヴェナント」ではなく「スポットライト」だったアカデミー作品賞。動で圧巻という評し方のできる作品は「レヴェナント」だったけれど、方や「スポットライト」は、西側、特にアメリカのマジョリティ・キリスト教であるカトリックの倫理規範・根幹を覆し、暗部をえぐり出すという意味で、賞に値する静で秀逸な作品と言えると思った(ちょっとドラマ調ではあるが、ネタばれはしないけれど、後半部・主人公の記者・自責の念がある)。これが、実話をもとにした映画というフィクションでもあるけれど、この背景にある実話のおぞましさは、カトリック・キリスト教の中にカモフラージュされ、長く封印され、しかも沈黙を余儀なくされた、・被害者・が、その被害を心の中にしまい込まざるを得なかったこと、そして彼らの・被害・をカミングアウトさせ、その加害を焙り出す。その焙り出し、追及したのはボストン・グローブ紙の記者たちで、新任の独身ユダヤ系編集長だった。遡れば、実は20年前ほどから訴えられ、その事件を取りあげた弁護士等がいたが、圧力から変人扱いされる(現在も追及しているとされる)。または取引で検事はダンマリ。しかも証拠文書開示は、文書自体が抜かれる。つまり、宗教と街ぐるみの隠ぺいである。では、なにをしたか・・・。神父らの社会的弱者の子供たち、下は4歳から13~4歳までの神父側曰く・合意レイプ・だ(児童虐待ともされる)。詳細も暴露される。しかもほとんどが男の子。このことがきっかけで、大人になりホモセクシャルにならざるを得ない被害者もいる。では、これが公にならず、教会はどう対処したか? 加害神父をほとんどすべて・病欠・扱いにして、他の場へ配置換えする。そのことは、教会の権威・枢機卿もその事実をしりつつ、隠ぺいしたのだ(この実話の中で訴えられた枢機卿は、ボストンから、あのサンタ・マリア・マッジョーレに移動という。びっくりだ)。ただ、記者たちは、この事実の裏付け・証拠を取るため、あらゆる動きをするが、すんなりいったわけではなく、様々な障害・圧力を身内からも受ける。しかも、取材、裏付け調査の最中、2001年の9.11が起き、追及を中断せざるを得なかった。
やがて2002年、決定的な開示文書を入手。この犯罪が、教会内部と地域がシステム化しているところまで暴き、それを新聞公表した。このことで教会信者からの抗議・暴動のリバウンドを恐れたが、結果、多くの被害者が声なき声を上げることになった。これは書いてしまうけれど、最後にテロップで、神父の児童虐待件数は1000件を超えたという(ショーン・コネリー主演の「薔薇の名前」も数百年前の教会でのホモセクシャル性問題が関わっていた)。つまり、このおぞましい出来事は、もしかしたら現在でも教会内部で行われている氷山の一角であるということ。注意深く海外の記事を見ると、これに関連した教会不祥事が出てくる。
しかしながら、この問題・事件がよく表面化したと思うし、様々な圧力の中、ジャーナリストもよく追及したと思う。もちろん、少数派の被害者を代弁した弁護士や調査協力した団体もいなければ、明るみにはならなかったかもしれない。カトリック・キリスト教のもう一つの・顔・を考えさせられる作品になっている。観る価値あります。
トム・マッカッシー監督、撮影監督が日本人・マサノブ・タカヤナギ
主演・昨年バードマンでアカデミーのマイケル・キートン、マーク・ラファロ、リーブ・シュレイバー等。