【洒落怖】幽霊を見る方法(名作・長編)

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『幽霊を見る方法』

788 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:11 

俺が高2の時に体験した話をする。


俺は小学生の頃から怖い話が好きで、

そのテの本やテレビの特番やなんかは必ず見ていた。

高校に入っても、クラスの好き者と集まってはよく怪談話をしていた。

霊を見たいと思っていた。


ある日、教室で弁当を食いながら、

いつもの連中K(リーダー格)やD、Sなんかと怪談話をやっていると、

同級生のYが何気に仲間に加わってきた。

その時は女の子もいて「キャー、キャー」やってたから、

Yも一緒に騒ぎたくなったのだろうと思った。

するとYは、「おい、K。おまえ、幽霊見たことあるのか?」と聞いてきた。

Kは「ないよ。見ようとしていろんなことやったり、行ったりしたけどな」

と答えた。

「おまえが霊を見たいなら、確実に見れる方法を教えてやろうか?」

「なに???」

Yによると、Yはいわゆる見ちゃう奴で、

子供の時からそうだったので、今ではもうなんともないという。

ただ、霊によってはかなりきつい時もある。

だから、遊び半分であまり霊とは関わらないほうがいい。

俺たちがよくそのテの話をしているので、

ちょっと忠告にきた、とのことだった。


789 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:14

「俺の言う通りにすれば絶対に見れるけど、どうする?」

「おお!教えてくれ!」

他の連中も「マジかよ!」「見ようぜ!」とか言って興奮している。

Yによるとその方法は、

不慮の事故とか、殺人とか、

この世に未練を残した人の死んだ現場に行って、

心の底から同情してやることだという。

本当にあなたは可哀想な人だ、

この世でまだやりたいこともあっただろうに、

できることなら私が替わってあげたかった・・・というふうに。

そうすれば必ず幽霊が現れるという。


俺たちはさっそく、その週末の土曜日に実行することにした。

メンバーはいつもの、K、D、S、俺、そしてOBのS先輩の5人。

いつもキャーキャーいっている女どもは、怖すぎると言って不参加。

場所は東京の郊外にあるO市の山道だ。(我々はK市に住んでいた)

そこは24才のOLがレイプされ、絞殺死体で発見された場所だった。

当時わりと記憶に新しい事件だったとはいえ、

図書館で新聞記事を探したり、事前に資料をそろえたのだから、

我々もなにか取り憑かれたような感じだったかもしれない。


790 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:17

土曜の深夜12時に、俺らはS先輩の家の前に集合して、

先輩の車で現地に向かった。

車中、みんなそれぞれギャグをかましながら陽気にしていたが、

内心ビビッてるのは明白だった。

俺も、車が街道から田舎道に入って、

あたりが鬱そうとしてくるにつれ、

こりゃやっぱまずいんじゃねーか、と思い始めてきた。


対向車もいなくなり、まわりが畑や林ばかりになってくると、

先輩の隣で地図を見ながらナビしてたKが、「この辺だぞ」と叫んだ。

声がうわずっているのがわかる。時計を見ると1時半を少しまわっていた。

車を道の端に停めて、俺たちは現場を探すことにした。

俺はカセットテープレコーダーと懐中電燈、

それと密かに持ってきたお守りをポケットに入れて外に出た。

Dがコンビニで買った『写るんです』でその辺をバシバシ撮ってる。

S先輩が車に残り、ヘッドライトを消すといきなり暗闇になったが、

道沿いの外灯と月明かりでわりとまわりが見える。

山のほうへと続くわき道を50メートルくらい入り、

現場らしきところを探していると、さすがに背筋が冷たくなってくる。

ここら辺で人が殺されたんだ・・・


791 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:22

しばらく歩いていると、「あっ」とSが声を上げた。

「どうした?」と俺が聞くと、Sは斜め向こうの地面を指している。

見ると、そこだけ草が取り払われ、

小さいお猪口みたいなものに線香がささっていて、

まわりに花が供えてある。

俺は懐中電燈でそこを照らしながら、皆の顔を見た。

月明かりのせいか、青白い精気のない表情をしている。

全員無言。俺は情けないことに足が震えて、

腹のあたりの力が抜けてきたのを感じた。

これはまずい。どう考えても尋常じゃない。

俺が「やっぱよそうぜ。シャレになんないよ!」と言うと、

Kは「何言ってるんだ!ここまできたんだぞ。やるしかねーよ!」

と、ひきつった顔つきで食ってかかる。

DもSも泣きそうな顔をしている。

「本当に出てきたら、どうすんだよ・・・」

Dがか細い声を上げる。

「ばかたれ!それを見に来たんだろうが。でも・・逃げればいいよ」

Kも怖いに違いない。必要以上に大声で怒鳴る。

結局Kの勢いに負け、霊を呼び出すことになった。


792 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:23

全員で目をつむり、花が供えてある場所に向かって両手を合わせ、

いち、に、のさんで同情する。

俺はカセットを録音状態にして足元に置いている。

全員両手を合わせ身じろぎもしない。

あたりからは虫の鳴き声と、

ときどき吹く風にそよぐ葉の音以外は何も聞こえてこない。

俺は目をつむりながら、

『○○さん(名前は調べてあった)、頼みますから出て来ないでください』

と一心不乱になって祈っていた。

俺は、冗談じゃない、幽霊なんて見てたまるか、と思っていた。

あれほど見たがってたのに、いい気なものである。


しばらくそうしていると、(実際は1分も経っていないと思う、

今から思えば)一瞬、まわりの空気が変わったような気がした。

なんていうか、密度というか濃さというか・・・

そして、口の中がおかしい。

妙にきな臭いような、錆びくさいような感じになってきて、

これは恐怖でのどがカラカラになったに違いない、

あるいは貧血の前触れかも・・などとあれこれ考えていた。

すると、「あぅっ! わわわぁ!」と声にならない叫びがあがった。

「ど、どうした!」

俺は飛び上がり、他の連中を見た。


793 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:24

Kが座り込んで、口を大きく開けたまま前方を凝視している。

見ると、女があお向けに寝転がって、首だけ起こしてこちらを見ている。

俺は頭が真っ白になった。

まるで映画のワンシーンを、

スローモーションで見ている感じとでも言おうか。

「あぎゃーっ!!!」

転げるようにその場から逃げ出し、もと来た道をめちゃくちゃに走った。

前方をDとSが走ってるのがわかった。

あれ、Kは?それにカセットを忘れた。

信じてもらえないかもしれないが、

俺は大パニックのさなかにそんなことを考えていた。

そして後ろを見ると、さっきの場所にKがまだいるのが見えた。

やばい!

俺は引き返し、カセットをひったくると、

座ったままのKの頭をボカッとなぐった。

女のほうを睨みつけるように見ると、さっきの体勢のままだったが、

体の輪郭がきらきらし始めて、体はなんというか、

しゃぼん玉がだんだん薄くなって透明になり、

消えていくように、消えてしまった。


俺は呆然としているKを引っ張っていく道すがら、

『出てくるなと言ったのに出てきやがって』という怒りでいっぱいだった。

もちろん、今から思えば非常に身勝手なのだが、その時はそう思ってた。


794 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:25

先輩の車まで来ると、DとSが狂ったように手招きしてる。

「早く来い!」「何してる!逃げるんだ」

猛スピードで車を走らせている先輩に、一部始終を話すと、

「マジかよ・・」と顔をこわばらせ、しきりにバックミラーをのぞく。

Kによると、一瞬腰が抜けて動けなくなり、

その間中あの女と目が合っていたらしい。

車中、全員で目撃したことを言い合い、

間違いなく一致していることを確認した。

あれはやはり幽霊だったのだ。殺された女の霊が出てきたのだ。

そう考えるのが一番自然だ。そう結論づけた。


翌日曜日。俺たちはKの家に集まって、Yを待っていた。

昨日の出来事を全部話し、

幽霊が見れるYに判断してもらおうというわけだ。


しばらくしてYがやってきた。

俺たちを見てどこか沈んだ顔をしている。

昨日の一部始終を話すと、「やっぱりな」と言った。


795 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:25

「なんか嫌な予感がしてたんだ。本当にやっちまったんだ」

「おまえが言い出しっぺなんだからな」

Kが毒づく。

「いくらなんでも、強姦されて殺された女なんて・・・」

「おまえ言っただろう、この世に未練がある奴って」

「で、おまえ同情したのか?」

「ああ、あたりまえだ」とKが言う。

「俺は出てくるな、と念じた」と俺が言う。

「俺もだ」「俺も」とDとSが言う。

「あれはやっぱり幽霊か?」と俺が聞くと、Yは

「ああそうだよ、間違いないね」と言った。

「俺はあの女と見つめ合っちゃったんだからな」と、Kが弱々しく笑った。

「今、おまえの肩にのってるよ・・・」とYが言った。

「??!!」


796 :体験告白 :2001/05/05(土) 20:27

その年の冬、Kは休学し、翌年退学した。

家族そろって長野に引っ越して行った。理由はあえて言わない。

後から考えて、俺にはわからないことがある。

Yは最初、俺たちを心配して、霊にあまり関わるなと言いたくて、

近づいてきたのではなかったか。

なのに、あえて霊の呼び出し方法を教えたのはなぜか。

Kが引越してから、YがC子と付き合い出したのも偶然か。

C子はKの彼女だった。

あの日、Yが近寄ってきた日も、C子はKのそばにいた。

たぶん俺の妄想なのだろう。今となってはどうでもいいことだ。


それから、あのカセットを翌日全員で聞いた。

ザーッという音の中に、

かすかに「・・しぃ、・・しぃ」と女の声が入っていた。

Yは「苦しい、苦しいと言ってる」と言うが、

俺には「悔しい、悔しい」に聞こえた。

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