【洒落怖】合宿(学校・中編)

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『合宿』

136 :合宿:02/09/11 04:24

不可解な部分もあると思いますが、全て本当の話です。


中学生の頃、俺は運動部系の体格に似合わず、吹奏楽部に所属していた。

約40名の部員のうち、男子は自分を含めてたった3,4人しかいなく、

俺はクラリネットを担当していた。


夏休みになってから、県大会へ向けて強化練習合宿をすることになり、

山にある宿舎で1週間の合宿が始まった。

宿舎にはクーラーがなくて異常に蒸し暑く、

しかも窓から虫が入り込んでくることがしょっちゅうあって、

環境はかなり悪かった。

それでも何としても県大会で好成績を収めたかったので、

皆で我慢して練習を頑張った。

そして、あのおぞましい事件は合宿5日目の夜に起こった。


その日の夕方の練習が終わってから、

部員全員で宿舎の近くにある湖で花火をすることになった。

同じパートのS子が「虫に刺されるから」という理由で、

どうしても花火に行きたくないと言うので、

仕方なくS子を置いて湖に出発した。


S子の友人であるA美、K恵と一緒に湖への道を歩いていると、

突然A美が「やっぱりS子も連れてこようよ」と言い出し、

宿舎に引き返すことにした。


宿舎へ戻ると、A美は個室に行ってS子を呼んだ。しかしS子がいない。

3人で手分けして宿舎を探してみたが、S子はどこにもいなかった。

どこかですれ違ったかもしれないと思い、再び湖に向かった。


湖に着くと、すでに花火が始まっていた。

そこでもS子を探してみたが、やはりいなかった。

顧問の先生にS子がいなくなった事を言うと、

S子は確かにさっきまでここで花火をしていたという。

俺は少し不思議に思ったが、

とりあえず3人で湖の周りを探してみることにした。


湖のボート乗り場までやって来た時だった。

何気なく向こう岸を見ると、S子らしき人間が湖のほとりに立っていた。

「おーい、S子!」

A美とK恵が大声で叫んだが、向こうは何の反応もない。


137 :合宿:02/09/11 04:24

俺はよく目を凝らしてS子の方を見てみた。

向こう岸までやや距離があり、しかも暗くて視界が悪かったので、

はっきり見えなかった。

・・・しかし、ドーン!という大きな打ち上げ花火の音と共に、

湖が鮮やかに照らし出された時、

俺たちはS子を見てぎょっとした。

確かにそれはS子だった。

彼女の着ている白のワンピースには、はっきりと見覚えがあった。

だが、S子の顔は信じられない程グシャグシャに潰れていた。

血だらけで、目や鼻、口の位置が全くつかめない。

それが本当に顔であるかどうかも分からない。

まるで顔面だけミンチにされたかのようだった。

「イヤァァァァァ!!!」

A美が叫んだ。

K恵は涙をこぼしながらただ震えていた。

S子はグシャグシャの顔面をこちらに向けたまま、

もはや存在しない目でこちらを凝視していた。

顔はないのに、俺たちの方を見ているという事だけは分かった。

その時俺はあまりの恐怖で、

2人を湖に置いたまま森の方に逃げ出してしまった。

全て忘れて、ひたすら全力で走っていた。

皆が花火をしている場所まで戻ってくるのに5分と掛からなかったと思う。

その時の俺は完全に気が動転していたので、

今でも皆に何を喋っていたのか覚えていない。


少し落ち着いてから、

俺はA美とK恵をボート乗り場に置いてきてしまったことを思い出し、

それを伝えて、部員全員でボート乗り場まで探しにいくことになった。

部員はみな半信半疑で、冗談を言う人も多かったが、

顧問の先生だけは険しい表情だった。

部員が「本当にS子どうしちゃったんだろう」と先生に訊くと、

先生は、

「きっと大丈夫だ・・・顔がグシャグシャってのは、

 いくら何でもあり得ないよ、はは」

などと軽く笑いながら言っていたが、顔は引きつっていた。


部員全員で湖の辺りを探したが、結局S子は見つからず、

ボート乗り場で倒れているA美とK恵だけが見つかった。

その日は夜も遅かったので、そのまま宿舎に引き返すことになり、

S子の行方は分からずじまいだった。


138 :合宿:02/09/11 04:25

次の日になって、顧問は警察を呼んで湖周辺を捜索してもらったところ、

信じられないことに、ボート乗り場の近くの水の底から

S子の死体が見つかった。

しかもどういう訳か、死体の首は鋭利な刃物で切り取られたかのようにして

無くなっていたそうだ。

突然の出来事にうろたえ、泣き出す部員がほとんどだった。

部員には警察からの質問がいくつかあったが、

「最後にS子さんと接触した場所はどこだったか」

という質問に対しては、ほとんどの部員が宿舎と答えたが、

先生も含めて5人は、花火をしている時に湖で見たと答えた。

しかし、5人とも彼女と直接話したりした訳ではなく、

ただ姿だけを見たと言うのだ。


合宿は中止になって、部員達はバスで学校に戻り、

そのまま解散ということになった。

警察はこの出来事を殺人事件として調査を続けたが、

結局その後、湖では何も見つからず、事件の真相は謎のままだった。

A美とK恵は精神的にまいったせいか、

夏休みが終わっても部活どころか、学校にすら来ることはなかった。


そしてある日、顧問の先生に呼ばれて、こんな話を聞かされた。

あの日の夜に先生は、花火をしている時にS子の姿を確認しているが、

その後見失い、

しばらくしてから、湖の向こう岸にいる彼女を見たそうだ。

その時は花火の光もあり、何かの見間違えだと思っていたそうだが、

向こうにいたS子の顔面は、

赤ペンキで塗りつぶしたかのように真っ赤に染まっていたと言う。

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