【洒落怖】キコリのはなし(不可思議・中編)

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『キコリのはなし』

735 :キコリのはなし 1:03/04/26 11:35

朝、林道を車で走って現場へ向かう途中。

前を歩いてた登山者が道の脇によけてくれたから、窓越しに会釈をした。

運転してた相方は「おまえ何してるんだ」と言い、

「よけてくれたから会釈したんじゃねぇか、人が歩ってても徐行もせんと」と返したら、

「誰もいない」と言う。

振り返ったら、やっぱり誰もいない。隠れるところもわき道もない。

道の山側も谷側も絶壁。


737 :キコリのはなし 2:03/04/26 11:42

ちょっと長い隋道をいつものように車で走っていると、

後ろからターボエンジンの爆音が聞こえてきた。

「えらアオってんなぁ」とバックミラーを見たが、後続車はない。

車の影はないのに、暴走族のような不規則な爆音だけがピッタリとついて来る。

相方「聞こえるか・・・」

オイラ「聞こえてる・・・」

相方「後ろにゃなんもねえよなあ・・・」

オイラ「なんもねえ・・・」

「うわあああ!」と、二人でひっくりかえった声を出し、

ブレーキを踏んで減速すると、(隋道の真ん中で停車するのも怖い)

ターボエンジンの音だけがオイラ達の軽トラを追い越して行った。


翌日、落ち着きを取り戻した二人は、

「昨日のアレは、自分の軽トラの音が、隋道の中で反響して聞こえたのだ」

「追い越されたように思ったのは、軽トラが隋道の半分を過ぎた時、

 音の跳ね返る向きが変わったのだ。

 行くのか来るのかわからない、救急車のサイレンと同じだ」

と結論を出し、なぜか「今日も聞こえるはず」と決めてかかり、

同じ時刻に同じ隧道を通り抜けた。


あの音があの日だけのものであったことは言うまでもない。

忘れもしない10月13日、埼玉県成木の吹上隋道での出来事。


738 :キコリのはなし 3:03/04/26 11:46

枝打ちをしていると、20mほど下の方で二人連れらしき女の話し声がする。

楽しそうに笑っている。

たまに鉄砲撃ちが犬を連れて入ってくる事はあっても、

一般のハイキングのオバサンが歩けるようなところじゃない。

もちろん道なんかない。

風に乗って遠くの人声が聞こえてきたのでは、

と思ったが、尾根にもハイキングコースはない。

これは相方も聞いていて、気味悪がっていた。


739 :キコリのはなし 4:03/04/26 11:52

夏の草刈の時に、現場のすみの方で、

小柄な老人がジッとこちらを見ていたことがある。

好意も悪意も感じられず、ただ仕事振りを見ている、というカンジだった。

オイラが会釈をしても全く意に介さないふうで、

相方に「あのジイサン知ってるかよ?」と訊いたんだが、

見えてたのはオイラだけだった。


その日は小雨のそぼ降る梅雨近い日だったが、

ジイサンは4~5時間はそこにいたろうか。

百姓のような身なりで、古くからの地元の人、という印象だった。


740 :キコリのはなし 5:03/04/26 11:59

別の草刈の現場ではこんなこともあった。

敷地の境近くを刈っていると、境界の向こうの隣の敷地から草刈機の大きな音がする。

エンジンの調子が悪そうな大ぶかしの音。

でも隣の筆には作業者なんか入ってなかった。

その音はすぐやんで、それっきり聞こえなくなったので、

空耳だろうということにして作業を続けていた。


そのうち煙草が吸いたくなったので、きりのいいところで休もうと考えていたら、

耳元で誰かが「一服だんべぇ」とささやいたのだ。

あわてて相方を探すと、はるか遠くに草刈機をふるう姿が小さく見える。

とても声の届く距離じゃない。

「わかったから話しかけねぇでくれ」と、思わず声に出して言っちまった。


そのあとも「一服だんべぇ」は、3~4回オイラにささやき続けた。

山を降りて、ふもとの部落の人に「昔誰か作業者が死ななかったか」と訊いてみたが、

そういうことはなかったそうだ。

あの声の主は誰だったんだろう・・・。


741 :キコリのはなし 6:03/04/26 12:06

さらに別の草刈の現場では、『3人』に囲まれてかなりパニクった。

その時ばかりはすごい悪意と害意を全身で感じた。

一体何が気に入らなかったのか解らんが、『何かされる』と感じたオイラは、

「仕事してんだよっ、忙しいんだよっ、たのむから邪魔しねぇでくれよ!!」

と大声で怒鳴った。

自分が呼ばれたと思った相方は、エンジンを止めて「呼んだかぁー」と言った。

真夏の昼下がり、気温は40度を越えていたが、冷たい汗をベッタリかきましたとさ。

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