【迷宮入り】坂出送電塔倒壊事件と五色台電波塔倒壊未遂事件
坂出送電塔倒壊事件
坂出送電塔倒壊事件(さかいでそうでんとうとうかいじけん)は、1998年2月に香川県坂出市で何者かが四国電力の送電鉄塔を倒壊させた器物損壊事件である。
事件概要
1998年2月20日13時18分、香川県坂出市坂出町の聖通寺山北側斜面に位置する四国電力讃岐坂出線14号鉄塔が突然根元から折れて、山側に倒壊した。この鉄塔は坂出発電所から讃岐変電所へ送電する高さ73mの鉄塔である。
被害
けが人はいなかったものの、周辺世帯約1万7000戸が停電し、番の州臨海工業団地などで操業する各事業所が操業停止に至ったほか、信号機約60基も停止した。四国ガスは香川県内3市の都市ガス供給について、番の州臨海工業団地の三菱化学から供給を受けていたため、高松市などの広い範囲で約9000戸のガス供給も停止した。坂出発電所では事故を感知した発電機3機が自動停止し、事故後46時間にわたって発電不能になったほか、コスモ石油や三菱化学など5社の操業も停止した。完全復旧までに1週間かかった事業所もあった。
この鉄塔から伸びる送電線の直下には瀬戸中央自動車道があり、垂れ下がった電線が道路上にかかったため、約5時間半にわたって児島I.C.-坂出I.C.間が全面通行止めになった。
四国電力に対しては顧客からの具体的な賠償請求は無かった[2]が、同社が復旧作業に要した被害総額は約19億円に上った。
出典:坂出送電塔倒壊事件
事件の影響
資源エネルギー庁はこの事件を受けて、電力会社11社を対象に緊急調査を実施した結果、鉄塔に対するボルトの抜き取りは全国各地で起こっていたことや、9割の鉄塔にフェンスなどが無く、誰でも立ち入れる状態にあることがわかった。これにより同庁は、各電力会社に対して対策を指示し、各地でボルト接合部分の溶接やコンクリート詰めなどの破壊防止対策が進む。この事件から5年後の2003年5月14日には五色台電波塔倒壊未遂事件が発生し、坂出との関連性を視野に入れた捜査が行われた。
捜査
香川県警はこの事件を当初、落雷などの「自然災害」と見ていたため、初動捜査が非常に立ち遅れた経緯がある。事件発生直後から現場には復旧作業に追われる四国電力社員らが立ち入っていたり、警察による規制線が張られていなかったため、現場から重要な証拠である抜き取られたボルトを持ち帰った新聞記者もいた。現場に県警の鑑識が入ったのはその後であり、まともな現場保存も出来なかった他、周辺道路における交通検問も事件直後でなかったため有効的に行われなかった。事件発生から3日目の夜、坂出警察署に特別捜査本部が設置されて本格的な捜査が始まる。警察の捜査によると、鉄塔台座部分のボルト80本のうち76本が何者かによって抜き取られていたことが判明した。外されたボルトは付近の斜面にまとめて捨てられていたことから、倒壊は人為的によるものと断定した。
出典:坂出送電塔倒壊事件
罪状
電気事業法違反罪(2003年2月20日0時時効)威力業務妨害罪(2001年2月20日0時時効)
器物損壊罪(同上)
往来妨害罪(同上)
特別捜査本部は犯人について、鉄塔がすぐに倒れないようボルトの一部を残すなどしていたため、鉄塔の構造に精通した人物が関与したと見ており、また動機については「四国電力への恨み」と見ている。
坂出送電塔倒壊事件から5年後「五色台電波塔倒壊未遂事件」
坂出送電塔倒壊事件から5年後の2003年5月14日午前10時半頃、次のような内容の手紙が朝日新聞高松支局に郵送された。
警告、パナウェーブ研究所の報道を中止せよ。五色台山中RNC電波塔のナットを外した。次は倒す
手紙はA4判の便箋1枚に黒いボールペンの手書きで、消印は高松市内の郵便局になっていたが差出人不明で切手も貼られていなかった。この郵便物を見た高松支局の職員は午前11時35分頃に香川県警高松北警察署へ「電波塔を倒すことをほのめかす文書が届いた」と通報した。ただちに高松北署署員と県警警備部が現場に急行し調べたところ、声明文にあったRNC西日本放送の施設ではなく、その南側にある香川県防災行政無線青峰中継局の電波塔でボルトやナット10数個が外されているのが発見された。
声明文にある「パナウェーブ」とは福井県の新興宗教団体で、教祖を中心とした白装束の集団がキャラバンで大移動する姿が当時世間を騒がせていた(詳しくはパナウェーブを参照)。
同じ香川県では5年前に坂出送電塔倒壊事件が発生しており、ボルトを抜き取るという手口が共通していた。
共通点
犯行の対象が鉄塔で、人目に付きにくい場所にあり、ボルトが外されている点は共通している。動機や犯人像がつかめないのも同じだ。四国電力事件との同一犯の可能性について、県警は「ゼロとは言い切れない」と慎重な姿勢を崩していないが、手口などに大きな違いがあることから懐疑的な見解を示している。
出典:四国新聞社
「坂出送電塔倒壊事件」時効へ
特別捜査本部は実況見分から、複数の工具を使用した複数犯の可能性が高いと見て捜査していたが、目撃証言や物証に乏しく捜査も難航し、全ての罪状が2003年2月20日までに公訴時効を迎え、前日をもって特別捜査本部は解散した。20日に香川県警が行った会見で黒川俊雄刑事部長は、初動の遅れが事件解決の阻害要因となったことを認めた。その後に起こった五色台電波塔倒壊未遂事件では坂出との関連性が疑われたが、結局両事件とも犯人逮捕や関連性の解明には至らず、事件は事実上迷宮入りしている。
「五色台電波塔倒壊未遂事件」も時効
有力な目撃証言も動機の絞り込みにも至らず、捜査は難航した。結局、坂出の事件との関連性も解明されず、器物損壊罪についても3年後に公訴時効を迎えた。その後も捜査の進展は無く、事件は事実上迷宮入りしている。
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