【洒落怖】雑居ビルの怪(名作・長編)
『雑居ビルの怪』
584 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:11:58 ID:6a8j38P20今からもう14年くらい前の、中学2年の時の話です。
日曜日に仲の良い友人達と3人で、
映画を観に行こうという話になりました。
友人達を仮にAとBとします。
私の住んでる町は小さくて、映画がある町まで出るということは、
田舎の中学生の私達にとって大きなイベントでした。
土曜の夜、うきうきしながら家にいると、Bから電話がありました。
『ごめん、明日バイオリンのレッスンがあったんだった。
ちょうど映画が終わるくらいの時間にレッスンも終わるから、
○○町(映画館がある町の名前)の駅の改札あたりで待ち合わせしよう』
という内容でした。
Bは結構なおぼっちゃんだったので、バイオリンを習っていたのです。
3人そろって楽しく大きな町で映画を観られると思っていたので、
少しがっかりしましたが、
映画の後に3人そろって遊べばいいやと気を取り直して、
その日は床につきました。
585 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:15:40 ID:6a8j38P20
そんなわけで翌日、僕とA、二人で映画を観に行きました。
映画を観終わって、
二人で「面白かったねー」と話しながら駅に向かおうとした時、
Aが「ねえねえ、このビルの3階まで上れば、駅へ続く歩道橋があるよ」
と言いました。
そこは大きな町だったので、
駅前から複数のデパート等へと続く歩道橋が3階くらいの高さで
広がっていました。
私も信号に捕まりながら歩くよりはいいなと思い、
映画館の横にあるビルに入りました。
そのビルは小さな雑貨店がたくさん入っている雑居ビルでした。
私達は階段を見つけ、1階から上って行きました。
3階までつくと、店側に入る扉がありませんでした。
きっとそのフロアは倉庫か何かになってて、
この階段からは一般の人が入れないようになってるのだと思い、
私が「やっぱり1階に戻って、普通に歩いて行こうか」と言うと、
Aは
「いや上ってみよう。4階からお店側に入れるかもしれないから、
そしたら別の階段から3階に降りればいいよ」
と言いました。
しかし、4階に上っても扉はありませんでした。
さらに5階へと進みました。しかし扉はありません。
だんだん私達も意地になって、どんどん階段を上って行きました。
588 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:18:59 ID:6a8j38P20
10階位まで上ったでしょうか。私は少しおかしなことに気づきました。
外からこのビルを見たときは、10階もなかったような気がしたのです。
しかしAは、「もっと行くぞ」と張り切って進んで行きます。
私達は階段をどんどん上って行きました。
20階くらいまで来て、私は完全におかしいと思いました。
階段も何故か古くさく、じめじめした感じになっていました。
ゲームのバイオハザードに出てくる苔むした嫌な階段みたいな感じです。
私はこの時点でかなり怖くなっていたので、
Aに向かって「ねえ、もう引き返そうよ。絶対変だよ、これ」と言うと、
先を行くAは私に背中を向けたまま、「ハハハ、変だね」と言います。
何をふざけてるんだと、少し気分を悪くした私は、
「何笑ってんだよ!帰ろうって言ってるんだよ!」
と少し語気を荒めました。
するとAはまた、「ハハハ、変だね」と言います。
私はそのAの言葉にさらにムッとしましたが、
階段を上っていくAの姿が少しおかしいことに気づきました。
589 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:21:30 ID:6a8j38P20
姿形はもちろんAなのですが、動作の一つ一つがおかしいのです。
確かに階段を上がる動作なのですが、
何かこう、人間が人形を手で動かしているような、ぎこちない動きでした。
右手、左手、右足、左足、それぞれが独立して動いているような、
ともかく変な動きでした。
私は足がすくんで、その場で立ち止まりました。
するとAが立ち止まり、クルッと私の方へ振り返りました。
「ハハハハハハハハハ変だね、変だね、ハハハハハハハ」
と笑うAの顔を見て、私は叫び声をあげました。
動作と同じく、顔の表情もぎこちなく笑うAの顔。
何より、白目が無くなって、眼球いっぱいに広がった黒眼が、
私に叫び声をあげさせました。
私は踵を返し、全速力で階段を駆け下りました。
途中足がもつれて転びそうになりましたが、
それでも無我夢中で駆けました。
気づくと、雑居ビルの一階にある薬屋さんにいました。
どうやって階段から出たか、その時の記憶はないのですが、
パニックになってた私は、後ろを振り返らずに駅まで走りました。
591 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:24:21 ID:6a8j38P20
駅の改札につくと、Bが待ってました。
Bは「遅い。映画が終わってから、
1時間も経ってるぞ」と怒っていましたが、
Aがいないのに気づくと、「Aはどうした?」と聞いてきました。
私はこのまま外にいると、
Aが後ろからあの奇妙な動きで追ってくるような恐怖に襲われ、
とりあえずBを促して、駅に中にあるファーストフード店に入りました。
とりあえず私は、起こったことをBに話しました。
うまく整理できずに話したので、
途中Bに「もう一度詳しく話せ」と何度も言われました。
最初Bは、私がからかっていると思っているような態度でしたが、
だんだんと真剣な顔つきになってきました。
というのは、Bは霊感が少しあるやつで、
私達に起きたことが尋常では無いとピンと来たようです。
Bは「とりあえず、そのビルに行ってみよう」と言いました。
私は嫌だと言いましたが、「Aをほっとけないだろ」という言葉を聞いて、
「確かにそうだ。Aは何かに憑かれたのかもしれない」
と思い、件のビルまで行きました。
先刻と同じように階段を上ってみると、
3階にはCD屋さんへと続く扉がありました。
4階に上ってみるとゲームセンターになってて、そこも普通に入れました。
階段はそこで終わり。4階建てのビルでした。
私達は首を横にひねりましたが、
その日はとりあえず家に帰ることにしました。
明日もしかしたらAは、普通に学校に来るかもしれないと思ったからです。
593 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:28:45 ID:6a8j38P20
次の日登校すると、Aは来ていませんでした。
私より10分ほどあとに来たBが、
顔を青くしながら今朝変な夢を見たと言いました。
その内容とは、Aが森の中を泣きながら裸足で歩いており、
しきりに「悔しい悔しい」と呟いている、というものでした。
Bは「あれは単なる夢じゃない」と言いました。
でも「どうしていいか分からない」とBは言いました。
それから数日経ってもAは帰って来ず、捜索願いが出されました。
私とBも警察まで行って、その日のことを聞かれましたが、
あの不思議なことは話しませんでした。
それから1ヶ月後くらいでしたか、Aが発見されました。それも死体で。
これは直接家族の方に聞いたわけではないのですが、
何故か私の住んでる町から100キロ以上離れている、
隣県の山の中にある神社の境内の横で、
カラッカラに干涸びて死んでいたそうです。
しかも、死後1ヶ月は経っていたそうです。
当時は、Aが死んでとてつもなく不快な体験でしたが、
日が経つにつれて忘れて行きました。
この間Bに何年かぶりに会って、
「あれ何だったんだろう」という話になって思い出した体験談です。
594 本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:30:53 ID:6a8j38P20
以上です。
あれからあの映画館に行ってませんが、
こんど久しぶりに行ってみようかな。
603 :本当にあった怖い名無し:2006/06/14(水) 03:50:57 ID:6a8j38P20
当時、友人が死んだということがショックでして、
ちょうど受験勉強を始めないといけない時期に
さしかかっていたことを幸いに、
「今は勉強に集中しなきゃ」と、忘れようと努力したのです。
逃避ですね。
何より、あのビルのことが本当に嫌で、忘れたかったのです。
なので、少し記憶が曖昧ですが、
Aがおかしかったのははっきり覚えています。
Aの死に方は、あくまで他人から聞いた話なので、真実か分かりませんが、
隣県で見つかったというのは確かみたいです。
私も詳しく人に聞くのが嫌で、情報を避けていたので詳しくは知りません。
この間会ったBは、「あの夢は今でもはっきり覚えている」と言ってました。
あの映画館に行こうと思ったのは、
私は今東京にいて、あの町もだいぶ様変わりしたらしく、
どれくらい変わったのかとなんとなく思ったからです。
今度帰省した時にでも、車で映画館の前を通ってみようという程度です。
それでは。
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