【洒落怖】エスカレーターに乗っている母娘(名作・長編)

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『エスカレーターに乗っている母娘』

350 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 12:42:40 ID:/kWWBoHz0


とある、ヨーロッパの国に留学してた時の話を。


まぁ言葉もままなら無い頃、よく日本人の友達を家に呼んで飲んでたんだが。

俺の家は屋根裏で、大き目の丸窓から地下鉄の出口が見える。

エスカレーターだけでモロに出口専用なのだが、

怖いのは、たまに夜中過ぎに意味もなく動き始めること。

夜中なもんだから車どおりもなく、

音が良く響いて「ブーン」ってなるんだが、これが怖い。

たまに丸窓から覗いて確かめるんだが、これが誰もいない。


まぁそんなことがたまに起こる程度だった。


351 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 12:51:12 ID:/kWWBoHz0


ところがある週末、いつものように友達を呼んで飲もうと思い、

一番仲の良い画学生に連絡をした。

今ちょうど別の友達と飲んでたらしく、家に来るとのこと。


一時間ほどして、そいつが来たわけだが、連れはなんと可愛い女の子。

同じ学校で唯一の日本人で、俺は羨ましいと思ったのを良く覚えている。

で、その3人で飲み始め、芸術や最近のこの町のことを語ったりしてた。

(俺は美術史の学生だった)


12時を過ぎ終電が無くなり、治安もあまり良くない場所なので、

いつものように「泊まってけ」と言って、また再び飲みだした。


丸窓の傍でタバコを吸っている俺の友達が、

「エスカレーター動いてるぜ」と。

時計を見たら2時過ぎ。

またかと思い、「たまにあんだよ」と説明した。


352 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:00:26 ID:/kWWBoHz0


するとつれの女の子が興味をもったらしく、

「どれどれ」とその丸窓を覗いていた。

「本当だ」と、なんだかはしゃいでいた。

俺は俺で酒を飲みながら、

「独りでそれがあると怖い」

だのと、あーでもない、こーでもないと話していた。

実はその娘が気に入りだしてたわけだが。


しばらく覗いている彼女が、ふと「誰かいるよ」と言って俺を呼んだ。

「まさかぁ」

酔っ払いかなんかだろうと、隣から覗くと誰もいない。

「いないじゃん」

そういって彼女を見ると、「いないねぇ」と。

俺の友達も「誰もいるわけ無い」と言って、タバコをふかしていた。


俺はトイレに行き、友達はタバコを吸い終わり、部屋で飲み始めた。

ところが、ずーっと覗いている彼女が、

いきなり「あっ!」と小さく叫んだから、

二人ともびっくりして「どうしたん?」と聞くと、

「二人出てきたよ。お母さんと子供かな」


353 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:09:57 ID:/kWWBoHz0


んな馬鹿なと思い、覗いてみるがやっぱりいない。

「いねーじゃんか」「そういう冗談好きなのか?」

「こえーから止めてくれ」

だの散々愚痴った挙句、俺は眠くなったのでそのまま寝てしまった。


翌朝(むしろ昼近くだった)起きると、

俺の友達は眠りこけてたが、彼女がいない。

まぁ始発か朝方にでも帰ったのだろうと思い、気にはかけなかった。

が、別の意味で気にはなってたので、その夜電話した。


電話して、昨日どうしたのか聞いてみると、

『寝れなかったから朝方早めに帰った』とのこと。

やっぱそうかぃと思い、どうでもいいような事を一通り話し、

なんとなく今度二人で遊ぼうと約束した。

電話を切ろうとした時、『エスカレーターさ』と話してきた。


354 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:16:03 ID:/kWWBoHz0


なんであんなエスカレーターの話を引っ張るのか?

その時は不思議で仕方なかったが、

「今日も動くかもなぁ」と冗談交じりで話すと、

『今度動いても、あまり覗かないほうがいいよ。見付かるよ』

と、彼女が低い声で言った。

あまりに低い声で言うものだったから、

その時は「マジで俺はびびりだから、そういうのは止めてくれ」と、

ちょっと本気で頼んだことを覚えている。


で、それから3日後、二人で会うようになり、その日は彼女の家にお邪魔した。

俺は料理が出来るので(彼女が料理がまったく出来ない)、

俺が夕食を用意して二人で乾杯をした。


355 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:25:18 ID:/kWWBoHz0


それ以来、俺は彼女と付き合うようになった。

俺の画学生の友達は偉く無関心で、

「あっそ、おめでと」ぐらいしか言わず、

それからもよく家に来て飲んでたのを覚えている。


ところが、その交際も実はあまり続かなかった。

付き合い始めたのが、ちょうど今頃1月か2月だったから、半年程度。

理由は、いきなり彼女が日本に帰国したからだ。

帰る間際には相当痩せこけていたのを覚えている。

その時は「やっぱり俺がいても寂しかったのかなぁ」と、

あぁでもないこうでもないと、

俺を捨てて帰国した理由を考えていた。

帰国前の二週間ほどは、殆ど会ってもらえなかった。

おかげで別れもろくに言えず、今もちと引きずっている。


ただ余りに逃げるように帰ったので、俺は相当荒れた。

まぁその画学生の友達と、「女なんかどうでもいい」だの、

「あんな身勝手な奴だと思わなかった」だの、

愚痴りまくっていた。

友達は殆どうなずくだけで、あまり何も言わなかったのを覚えている。


356 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:32:09 ID:/kWWBoHz0


それから半年して、ちょうど一昨年の今頃、

それから別の国のアート学校にさらに留学した、

その友人からメールが来た。

『彼女が入院した。』

なんでも、怪我とかじゃなくて精神的なものらしい。

たしかに付き合ってた頃も結構不思議な子で、

金縛りや、独り言は日常茶飯事で、

年中うなされたり、ひどいと叫んだりしてたのは覚えていた。

ただそこまで酷いとは思っていなかったので、かなりショックを受けた。

その時は、日本に帰って様子だけでも見に行くべきかと思ったが、

悲しいもので、学校の単位的にも金銭的にも、

日本に帰ることは出来なかった。


358 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:42:32 ID:/kWWBoHz0


それから半年して、夏休みに一時帰国することがあったので、

そのついでに彼女の実家の広島まで行ってみた。

(俺は東京なので、交通費がかなりきつかった)


住所を頼りに実家を訪問した。

どうも様子がおかしいなと、彼女の実家の前で思ったことを覚えている。

と言うのも、なんて説明したらいいか分からんが、

なんか色がくすんでた気がした。

インターホンを鳴らすと、彼女の母親が出てきた。

俺を一目見ると、「あなた、○○さん!」と、ほぼ叫んでた。

いきなり叫ばれたのでびびったが、やっぱりその時も変だと思った。


360 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 13:52:06 ID:/kWWBoHz0


家に入れてもらい居間に通され、

彼女の容態を聞こうと思ったとき、愕然とした。

仏壇に彼女の大きな写真が、そして線香が焚かれていた。

俺はマジで混乱して、どういうことか把握できなかったから、

「どうしたんですか!」と叫んだ。

叫んですぐさま思ったのは、自殺したんだろう。


案の定、入院先から逃げ出し街まで出て、

とある雑居ビルから飛び降りたらしい。

その時のことは、正直俺も記憶が今でもあやふやだ。

ショックだったし、なにより、

やり直すつもりでそれなりの覚悟をしてたからだ。

理由を彼女の母親に尋ねるも、病院に入院していたこともあり、

精神的なものだとしか聞かされなかった。


結局、日も限られていて、墓参りをした次の日には東京に戻り、

その一週間後にはまた自分の留学先に戻った。


362 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:01:10 ID:/kWWBoHz0


留学先の自分の屋根裏のアパートに戻ると、手紙が届いていた。

なんと彼女からだった。正直、生まれて一番びびったかもしれない。

封筒を開けると、酷いものだった。錯乱していた。

辛うじて内容はつかめたが、本当に荒れた字だった。


わたしはしぬ。あれからずっとおいまわされてる。

げんじつにもゆめにもずっと、あのおとと、あのふたりがついてくる。


読める範囲で理解できた言葉はそれだけだった。

ただ、デッサンが同封されており、なんてことは無い、

俺のアパートの丸窓だった。

俺はあまり泣かないほうだが、この時ばかりは泣いた。

15年ほど前にオヤジが死んだときも泣いたが、それ以上に泣いた。


364 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:08:51 ID:/kWWBoHz0


それを機に、急遽帰国して今に至るわけだが。

帰国する前に、他国へ留学した画学生の国に遊びに行った。

相変わらず飄々としていたが、起こったことをすべて話すと、

「黙っていたことがある」といって語り始めた。


なんでも、彼女が俺の家に初めて来て以来、

ずっと変な親子に付きまとわれていたと言うこと。

なんとなくは予想していたが、

当時は本当にそんなことがあるとは思いもしなかった。

思えば、付き合った半年、

後にも先にも彼女はその一度しか家に泊まっていなかった。

俺にそれを黙っていたのは彼女の思いやりらしく、

その画学生の友人も約束を守り続けていたらしい。


365 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:19:06 ID:/kWWBoHz0


そしてそれを聞かされあと、俺は留学を取りやめ、

完全帰国することを打ち明けた。

すると、「実はもう一つ黙っていたことがある」といい、

「俺も見たんだ、実は」そう続けた。

「彼女の言っていた母親と子供を見た」そうも言った。

いきなり言われたもんだから、信じれなかったが、

「俺もそれ以来ずっと付きまとわれている。

 それから、あのエスカレーターのブーンとか言う変な音も」

そう言うと、いきなり怖い顔して俺にこう言った。

「日本に帰るまで、どんなことがあってもあのエスカレーターに近寄るな」


366 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:31:48 ID:/kWWBoHz0


帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、飛行機のチケットを手配し、

逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、

帰る前に、彼女との思い出の場所やらなんやらを一通り巡った。


その国での最後の夜に、ちょうど2時過ぎ頃、彼女が丸窓を覗いた頃、

エスカレーターがブーンと鳴り始めた。

友人の忠告も無視して俺は覗いた。しかもずっと、

そのエスカレーターが止まるまで見続けた。

なにもない。なにもいない。


367 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:38:17 ID:/kWWBoHz0


この話は、ここで終わる。

俺は幸いその親子に付き纏われずに日本に戻り、

普通に仕事をして暮らしている。

ただ、この話には、一つだけ今でも俺を悩ませている事がある。

それは、実家に着くと俺宛に届いた、

画学生の友人からの一通の手紙である。

そこには、今から自殺すると言うこと、

探さなくて構わないということ、そして…


368 :本当にあった怖い名無し:2007/01/16(火) 14:43:15 ID:/kWWBoHz0


俺が彼女と付き合っている間に、彼女をレイプしたらしい。

そして、それ以来、段々と彼女がおかしくなったと言うことが書かれていた。


それを読んだとき、俺は彼女が俺宛に遺した手紙を引っ張り出した。

最後のどうしても読めなかった一文を、やっとその時読むことが出来た。

『こめんなさい、本当にごめんなさい。』

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Sharetube