【洒落怖】お札の家(名作・長編)

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『お札の家』

154 :本当にあった怖い名無し:2006/10/06(金) 21:31:21 ID:vF5XFzQGO


2年程前の話ですが、つい最近完結(?)した話があるので

書いていこうと思います。

長くなりそうで申し訳ないのですが、

霊感0の自分が唯一味わった霊体験です。


広島県F市某町、地元の人間なら誰もが知る有名なスポットがある。

『お札の家』と呼ばれたその場所には、

名前通り無数のお札が貼られた家がある。

他の噂ばかりのスポットとは違い、ソコを訪れた大学の友人は、

ほぼ全員が不思議な体験をしたという。

普段霊感のない人にも見えるらしい。


友人の話。

「家の周りだけ、不自然に濃い霧が覆っとったんよ。

 んで、冗談半分で霧に塩投げたら、いきなりブワッと霧が裂けたんじゃーw

 流石にヤバ過ぎる思って逃げたったw」


どうやら異様な数の霊が集まってくる場所で、

見える人によれば、

お札に阻まれ家に入れない霊がウヨウヨいる、とのコト。

上の友人のコメントは印象強くて、今でも忘れられない。

『霊感が無くても見えた』

霊感の無い自分にとっては、いつか行きたい魅力的なスポットだった。


155 :本当にあった怖い名無し:2006/10/06(金) 22:01:11 ID:vF5XFzQGO


ふとした日、ファミレスでの食事中にお札の家の話を切り出した。

居合わせた仲の良い先輩と、

その彼女、友人Sはヤケにノリ気。「今すぐ行こう」となった。

元々地元の先輩と彼女は、高校時代に行ったことがあるらしかったが、

恐くて車を降りれなかったらしい。

他県からきていたSは特にノリ気だった。

話を出した後で少し恐くなり後悔したが、遅かった。


自分「いや、ホンマにヤバいらしいで?

   ソコ行って一週間寝込んだヤツとか、帰り事故ったヤツとか、

   普通におるらしいで?」

S「今さら何ビッっとんw

  俺霊感あるし、子供の頃から普通に霊とか見ようたし、

  その気になりゃ霊にもキャン言わしちゃるけぇねw」


自分は内心、コイツ馬鹿だなーと思っていたが、

「本当に危ない霊がいたらすぐに教える」「お前を先に逃がす」と言われ、

普段から怖いもの知らずで気が強いSが同伴するということもあり、

お札の家に行くコトを承諾してしまった。


156 :本当にあった怖い名無し:2006/10/06(金) 22:27:34 ID:vF5XFzQGO


時間は大体23時を回ったくらい。

心霊スポットに来るには早い時間だったが、

お札の家に続く林道は重々しく、暗いってだけで雰囲気があった。

車から降り、「うっわ、やっぱヤメといた方がエエんと違うーっ!?w」

等とハシャイでいたが、

先輩カップルが車から降りて来ない。


自分「どぉしたんすかー?w」

先輩「R(彼女)が気分悪いから無理やって。俺も残るわ」

S 「えぇー!せっかく来たんすから、見るだけ見に行きましょうよー!」

先輩「いやいやホンマにえぇわ。お前ら二人で行ってき」

S 「何ビッてんすかw霊なら俺に任しといてくださいよー!」

先輩「うるしゃーわお前!!Rが気分悪い言うとろうが!!

   調子に乗んな!!」


半分喧嘩になりかけたので慌てて止めに入り、

渋々二人きりで行くことになった。


S 「あーもー何なん!?絶対あの二人、車の中でエロいコトする気やで」

自分「こんな所てそれはないじゃろ…てか、お前先輩に態度デカ過ぎ」

S 「戻ったら思いっきり窓ガラス叩いて、脅かしちゃろうでw」

自分「…」


呆れて言葉も無かったが、急に視界に飛込んできたバリケードに驚き、

立ち止まってしまった。

S 「…こっからが本番っちゅうコトかw」


『ここから先○○市保有地区により立入り禁止』


有刺鉄線まで使われた、厳重なバリケードだった。

乗り越えることができなかったので、

一度林に逸れて、の有刺鉄線が途切れた所で乗り越え、

また道に戻り先に進んでいった。


160 :本当にあった怖い名無し:2006/10/06(金) 22:49:35 ID:vF5XFzQGO


今考えると、あのバリケードを越えた瞬間、急に寒くなった気もするし、

そんなコトは無かった様な気もする。

とにかく空気が変わった、ってコトは自分にもわかった。


緊張してしまい、無言で歩く自分。

裏腹にSはやたらキョロキョロし、

「あっソコにおるなー。おぉ!アッチにもおるで~」

相変わらずのハシャギ様だった。


所で、『お札の家にはダミーがある』というコトを前々から聞いていた。


学校の友人。

「あんなー。林道を進むと、まず一件の白い家にぶつかるんじゃ。

 でも、その家は放置されたホンマに普通の民家じゃけ、

 その家の横に登坂になった獣道があるけぇ、

 ソコを登らんとお札の家には辿り着けんよ?

 タマに、その普通の民家をお札の家と勘違いして、

 そのまま帰ってくるヤツとかおるけぇのーw」


そして、そのダミーの家は本当にあった。

Sにダミーの家の話はしてあったので、

二人とも落ち着いて家の横の獣道を目指した。

そこでSが、「ちょぉ待って、煙草に火ィ着けるけぇ」と立ち止まった。

なかなか火が着かない。

ボーッと白い家を眺めていた自分は、

「ココも中々雰囲気あるなぁ」と白い家に近づいた。


164 :本当にあった怖い名無し:2006/10/06(金) 23:13:07 ID:vF5XFzQGO


なぜかその普通の民家も、周りをチェーンで仕切られていた。

特に何も感じずチェーンをくぐろうとすると、

「Mっ!!(自分の名前)」

Sに呼び止められた。

驚いて振り向くと、

Sが煙草をくわえたまま目を見開いてコッチを見ている。

何事かワケが分からず動けないでいた自分だが、

Sの視線が自分では無く、自分の背後に向けられいる。

と気づいた時、全身に鳥肌が立った。

背筋が凍るように冷たくなったのは、生まれて初めてのコトだった。

すぐにSに向かって走り出したいが、

どうにも足が動かない。完全にパニックになっていた。

それを察してかは知らないが、

突然Sが「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」と馬鹿デカい雄叫びを上げ、

もと来た道へ走りだした。

その大声に助けられ、自分も我に帰って全力で駆け出した。

林道がやけに長く感じ、絶望的な恐怖感があったが、

『後ろを振り返ってはいけない』って、

まさに今のこういう状況のコトを言うのだろうな。

という考えが、頭をよぎったのを覚えている。


ようやく林道を抜け一般道に飛び出し、凄い勢いで車に乗り込んだ。


186 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 00:02:42 ID:vF5XFzQGO


車に乗り込むと、ただならぬ様子を察知した先輩が聞いてきた。


先輩「どうしたんなお前ら!?何があった!!」

自分はガタガタ震えが止まらず、まともに答えるコトができない。

「とにかく早く車出してください…お願いします…

 すんません…お願いします…」

その場所から離れたい一心で、それしか言えなかった。

怯え方が尋常ではなかったので、

先輩もからかったりせず車を急発信させた。

しばらく無言のドライブが続き、

先輩の彼女のすすり泣く声が聞こえるだけだった。


不意に背中を、強くバン!バン!と叩かれた。驚いて横を見ると、

満面の笑みを浮かべたSの顔があった。

S 「楽しんでもらえた?w」

その一言で全てを理解した。

正直Sを殴り倒したかったが、怒り以上に安堵感、

解放感が溢れてきて一気に体中の力が抜けた。

先輩も状況を飲み込んだらしく、

「S、お前なぁ~」とミラー越しにSを睨みつけていた。

コイツは最悪だ。コイツとだけは二度と心霊スポットには近付かない。

あーでも、良かった~…

先輩も同じ気持ちだったのだろう。

普段怒りッポイ性格だが、Sを責めるコトはあまりせず、

彼女をなぐさめていた。


188 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 00:09:46 ID:L5r+CCt+O


落ち着きを取り戻した車内は一気に明るくなり、

Sがあの時の状況を再現するなどして、

街に戻る頃には元のテンションでハシャイでいた。


ちょうどコンビニに差し掛かり、

先輩が「飲み物買うか」 と言ったその時だった。

「ドン」

車の屋根から大きな音がして車内が揺れた。

先輩はとっさに急ブレーキを踏んでしまい、

後続の車からクラクションが鳴り響いた。


先輩「えっ何!?今の何なん??」

R(先輩の彼女)「とりあえずコンビニ入ろ!後ろの車に迷惑だし!」

自分にも何がなんだかさっぱりだった。

鳥か何かかな?でも有り得るか、そんなコト…


考えている内に、車はコンビニに入った。

急いで車から降り屋根を確認するが、ヘコんでいる様子はない。

携帯のライトで照らしても、傷がついたような跡は見当たらなかった。

先輩「おかしいなぁ。絶対何か落ちてきたよなぁ!なぁ!」


何が起きたのか全く検討がつかず、

車の周りや近くの道路をウロウロしていたら、

Sが降りてきていないコトに気づいた。

車に戻り、Sに「どうした?」と聞くが返事が無い。

うつ向いて少し震えている気がした。

変な胸騒ぎがして強めに肩を揺すって、

「おいどうしたんなお前!!」と叫んだ。

Sはしゃがれた声で、

「ついてきとる」と呟いた。


196 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 00:50:02 ID:L5r+CCt+O


Sの一言に自分は正気を失った。

「ついてきとるって何なん!?お前あれ嘘だったんと違うんか!!」

Sは青ざめて震えている。先輩の彼女も泣き出してしまった。


とりあえず落ち着こうというコトで、

コンビニで暖かい飲み物を買って与え、少しずつ話してもらった。

S 「ハナッからヤバかったんじゃ、あの場所は。

   バリケードあったじゃろ?

   あれ、わざわざ林の奥まで逸れたのは、

   有刺鉄線があったからじゃなくて、

   バリケードのすぐ向こうに、人が立っとったからなんよ…

   お前には見えてなかったみたいだから、

   何も言えんかったけど、あそこで行くのヤメようて言ったら

   糞カッコ悪いやん。


   バリケード越えても、霊はウジャウジャおったよ。

   林の中や林道に立ってた。

   でも、俺らには何の興味も無さそうに見えたから、

   何とか平気なフリができたんよ。


   …ダミーの家に着いた時、そこにはホンマに霊はおらんかった。

   やっと安心して、煙草吸おう思ったんじゃ。

   で、火着けよる間にお前がどっか行くから、

   お前の方見たらおったんじゃ。髪の長い女が。

   チェーンくぐろうとしとるお前を見下ろしとった。

   とっさにお前呼んで逃げようとしたけど遅かった。

   お前が振り向いた時には、その女がお前の背中に抱きついとった」


197 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 00:52:03 ID:L5r+CCt+O


「そっからはあんまり覚えてない。無我夢中で車に逃げ帰って。

 下向いてガタガタ震えとった。

 すぐにお前も乗り込んできたけど、恐くてお前の方向けんかった。

 でも下向いている俺の視界にも、

 お前の足元まで垂れている長い髪の毛が飛込んできたんよ。

 もう我慢できんかった。

 どうにでもなれと思って、お前の背中を思っきり叩いたんよ。

 効くとは思わんかったけど…女はいなかった。

 …後はわかるだろ?俺嬉しくてさ…」


そう話すSの声は相変わらずしゃがれており、全員が絶句した。


力を振り絞って聞いてみた。

自分「それで…さっきの車の音はその女で、まだ俺に憑いてるっての…?」

S「…多分、見えるヤツに乗り換えたか、

  お前の背中叩いたのがアカンかったか…今俺、

  鏡とか絶対見たくない…」


Sは震えているのに、妙な汗をベットリとかいていた。

先輩は心配したが、Sは自宅に帰ると言って聞かない。

独り暮らしってこともあって心配になった俺は、

Sの家に泊まるコトにした。

滅茶苦茶怖かったのだが。


211 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 01:33:50 ID:L5r+CCt+O


Sのアパートに戻った自分達は、飲む予定で買っておいた酒も飲まず、

直ぐ様寝てしまった。

ビクビクして寝るドコじゃないと感じていたが、

不思議とすぐに意識が飛んだ気がする。


次に意識が戻った時、洗面所の声から、

「ゲェ~~!!ゲェ~~!!」と、何かを吐く声が聞こえた。

急いで洗面所に向かうと、Sが便器にうずくまって吐いていた。

「大丈夫かっ!?S!!しっかりしろ!!Sっ!!」

叫びながら、夢中で背中をなんどもさすった。

でも、便器の中を覗いて氷ついた。

Sは血を吐いていた。

飛びそうになる意識を必死で保ち、狂ったようにSの背中を叩きまくった。

「コノ野郎!!ふざけんな!!コノ野郎!!」

泣きながら、ひたすらSの背中を叩き続けた。

寝るために薄暗い豆電球にした部屋の電灯が、

風も無いのにユラユラ揺れていたのを鮮明に覚えている。


どのぐらい時間がたったのかわからないが、呼んでおいた救急車が到着し、

運ばれるSと共に救急車に乗り込み、病院に向かった。

すでにSに意識はなかったが、俺の服を掴んではなさなかった。


Sが救急病院にて治療を受けた後、医者から説明を受けた。


212 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 01:36:16 ID:L5r+CCt+O


Sは声帯を損傷しているとのコトだった。

ただ、「滅茶苦茶に叫んだ程度ではそうならない」

という訳で事情を聞かれたが、俺は答えることができなかった。


翌日から別の病院に入院し、俺は毎日の様に見舞いに行ったが、

声帯治療のためSは話せなかった。

紙に文字を書いての会話となったが、

むなしく、そして悲しくて、あまり多くの会話はできなかった。

もちろん、あの夜の事など聞けない。


しばらくそんな感じで過ぎて行き、もうじき退院というある日、

見舞いに行くとSがいなかった。

聞けば、「昨日退院した」ということらしかった。

連絡ぐらいよこせよと思いつつ、Sに退院おめでとうのメールを送った。

ポストマスターからメールが返ってきた。Sはメアドを変えていた。

嫌な予感がしてあわてて電話するが、番号自体変えていた。


とにかく大学にくるのを待つしかないと思ったが、Sは来ない。

嫌な予感は的中した。S大学を辞めていた。

総務課で実家の番号を調べて欲しいと頼んだが、

「辞めた生徒の電話番号を勝手に教えることは出来ない」とのコト。

完全に連絡をとる手段が途絶えた。


その後約2年間、俺が大学在学中はSに会うことはなかった。


215 :本当にあった怖い名無し:2006/10/07(土) 01:51:00 ID:L5r+CCt+O


この話には後日談があり、それがつい最近わかった真相なんですが、

明日も仕事があるので、今日はここまでで落ちます。


ちなみに、>>186辺り書いてる時から耳なり止まりません。

トイレ行きたいけど我慢して寝ます。

明日辺り後日談書きますね。では~

『お札の家(後日談)』

513 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:32:39 ID:yCprYea9O


最近Sと再会した。キッカケは、同じサークル内の後輩が、

Sと同じ地元だとわかってからだった。

後輩に無理言って、先々週の土日を使って、Sの地元に案内してもらった。

中学まで良くSと遊んだというその後輩は、Sの自宅も知っており、

少々強引かと思ったが、前々からSが気になってしょうがない俺は、

Sの自宅を訪れた。


朗らかな感じで背の低い、活発そうなSの母親が出てきた。

事情を説明すると驚いていたが、すぐにSを呼んでくれた。

玄関にSが出てきた。髪を坊主にしていた。

突然の訪問に目を丸くしていたが、

「よぉ…」と苦笑いしながら、罰の悪そうな声を出した。

本当に久しぶりにSの元気そうな姿を見て、俺は泣きそうになった。


部屋に上げてもらい、色々と話しを聞くコトにした。

妙に緊張してよそよそしい会話だったが、Sは次の様に答えてくれた。

(以下、長い話しなので、ポイント毎に要約して書いていきます)


514 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:35:25 ID:yCprYea9O


1、あの夜何が起こったか。

爆睡する自分の横で、ひたすら眠れなかったS。

眠れなかったというか、Sは敢えて眠らなかった。

朝まで絶対に気を緩めまいと、固く心に誓ったらしい。


そして深夜、寒くなったSは、布団を取りに押し入れを開けた。

そこにあの女がいた。

Sがリアクションを取る間も無く、その女はSに重なった。

そこからの意識は飛び飛びだったという。


気づくと便器に向けて「ウゲェー!ゲェー!」吐いていて、

「本能的に異物を吐き出そうとしたんかな?」と語っていた。

しかし出てくるのは血ばかり、

「自分はここで死ぬかもしれない」と覚悟したらしい。

もう「吐こう」という意識とは関係なく、口から血が溢れてくる。

俺が背中叩いたり名前を呼び続けたのも、覚えていないそうだ。


515 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:40:22 ID:yCprYea9O


2、何故突然退院したのか。連絡手段を途絶えさせたのか。

病院の医師曰く、『畑違い』とのコトらしかった。

声帯はほぼ完全に治っており、尚も声が出ないのはSの意識問題、

精神面での傷。

つまり、『ウチの管轄外ですよ』と宣告されたそうだ。

Sの母親は、クリニックに通いつつの学業復帰を薦めたが、

Sは退院後、大学を辞めて実家に帰ると訴えた。

何と言われようが、絶対に折れなかったらしい。

その後、両親に迎えに来てもらい、Sは実家に帰った。

「半分狂いかけとったなw、でもどうしても、

 病院やクリニックで何とかなるとは思われんかった」


女は毎日夢に出てきた。以前には無かった、

夢遊病の癖もついていたそうだ。

状況が酷くなる前に神社か寺で祓ってもらい、

田舎で静かに暮らそうと考えていたらしい。

連絡手段を途絶えさせたのには、

ただ「心配させたくなかった」とだけ答えたが、

俺はSが、全てを忘れたかったんじゃないか、と考えている。


516 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:47:30 ID:yCprYea9O


3、あの女はどうなったのか。

実家に戻る前に両親に全てを打ち明けていたSは、

両親同伴の元、地元にある大きな寺を訪れた。

驚くことに、寺に着くなりSは住職により本堂に案内され、

「ここで全てを打ち明けなさい」と言われた。

声の出せないSは、紙とペンで全てを打ち明けようとした。

しかし、突然途中でペンが止まった。

あれだけ意識がハッキリしている時に、

しかも、呼吸が出来ない程の金縛りにあったのは初めてだったという。

突然Sが苦しみ出したので、住職達は大急ぎでお祓いを始めたらしい。

しかし目の前が真っ暗になり、数人のバタバタという足音、

お経や金属音を暫く聞いて、プツリと意識を失ったらしい。


次に目を覚ますと、寺の客間の布団の上で、住職と両親が側にいた。

住職が話してくれた。

特に強い怨念を残した霊で、憑き方が普通ではなかった。

内側から侵食しており、Sはもう少し遅ければ本当に危なかったとのコト。

住職は「中々出て行かないので、こんなモノを使いました」と、

木彫の仏さまを見せてきた。

身代わりの効果があるらしく、簡素な作りの人形だったが、

Sにはとても神々しく見えたという。


517 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:49:50 ID:yCprYea9O


3、あの女はどうなったか。その2

Sが声を失ったのにも、意味があるらしかった。

声には力があるらしく、霊が媒体を支配する際にその力を奪う、

と言うのは良くあるコトらしい。

言霊(コトダマ)と霊は密接に関係しているそうだ。


お祓いが済んでもまだ声を出せない様子のSを見て、両親は心配したが、

住職曰く、

「もう大丈夫。栄養をとって数日落ち着けば声も出るでしょう」とのコト。

実際一週間程で徐々に声は回復し、

以前通りの生活を過ごせるようになったという。

その後しばらくして、

Sは派遣業者に勤め、無事に今まで過ごしてきたとのコト。


518 :本当にあった怖い名無し:2006/10/11(水) 23:53:51 ID:yCprYea9O


以上>>154から長々と書いてきましたが、コレが自分の体験霊体験の全てです。

Sはお祓いの後、あの女はおろか一度も霊を見ることがなく、

「霊感を無くしてしまった」と語っていました。

身代わりの仏さまに、そういう力ごと封印されたのでしょうか?

とにかく、本当に危ない心霊スポットには、

遊び半分じゃなくても近づくもんじゃないってコトですね。

我々に、そういう異界のモノをどうにかできる力なんてありゃしないんだ、

と思い知らされましたよ。

長々と失礼しましたー。

『オススメの怖い話(名作・長編)』





著者プロフィール
Sharetube