【知ってる?】尿から出てくる美しい結晶

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はじめに

尿を遠心分離して顕微鏡を覗くと、様々な結晶成分が析出して見えることがある。


尿中に出現する塩類・結晶類は,大部分が摂取した飲食物や体内の塩類代謝によるものである。


代謝された成分が腎臓から排泄され,尿路系や排尿後の採尿容器内で、種々の物理化学的作用(含有濃度、pH,温度,共存物質など)によって溶解度が低下し,析出する。


よって,尿沈渣にみられる塩類・結晶類の多くは通常尿成分である。

病的状態によって出現する結晶はもとより、通常結晶においても病態によって重要な成分になることもしばしばあり,臨床的意義のある成分を鑑別し、報告することは非常に重要である。


写真を見ると『これがおしっこの中にあるのか!?』と思う人もいるのかもしれない。


普段の肉眼では見ることが出来ない綺麗な結晶たちを紹介していこう。

 
アルカリ尿中にみられる塩類、結晶

無昌性リン酸塩

健常人でも見られる。


常在成分の結晶化したものには

リン酸塩・シュウ酸塩・尿酸塩・炭酸塩・酸化ナトリウムなどがある。

リン酸アンモニウム・マグネシウム結晶

特徴は、切れ目が入っている西洋の棺桶型である。
マグネシウム・アンモニウム結石は、感染性の結石であり、尿素を分解する菌の感染により引き起こされる。


プロテウス・ミラビリスと呼ばれる細菌などが作る尿素分解酵素が尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する。

この生成されたアンモニアにより尿がアルカリ性になり、リン酸マグネシウム・アンモニウムの結晶化が始まる。


この結石の特徴として一度結晶化すると短期間で大きく成長する傾向にある。


また、尿路が短く尿路感染をしやすい女性が多く疾患する結石である。

リン酸カルシウム結晶

アルカリ尿、特に尿路感染症でみられるが、正常でもみられる。

尿酸アンモニウム結晶

アルカリ尿、特に尿路感染症でみられるが、正常でもみられる。

炭酸カルシウム結晶

アルカリ尿、特に尿路感染症でみられるが、正常でもみられる。
これらは塩酸や酢酸で溶解する。
 
酸性尿中にみられる塩類、結晶

無昌性尿酸塩

健常人でも見られる。

常在成分が結晶化したもの。

こちらも同じ尿酸塩である。


一見すると尿酸塩には思えないが同一の尿酸塩である。

尿酸結晶

尿酸結石は尿が酸性になると発生しやすくなる。


また、尿酸が多く尿中にある場合も発生しやすくなる。


つまり、痛風や高尿酸血症の方がなりやすい結石である。

40代以降の男性に多くみられ、女性は非常に少ない結石となっている。


また、高尿酸血症の治療薬により引き起こされる場合があるので注意が必要。

鉄アレイ状の形態を示す場合もある。

シュウ酸カルシウム結晶

尿路結石の大部分はカルシウム結石である。


そして、カルシウム結石の成分の大部分はシュウ酸カルシウムとなっている。

シュウ酸カルシウム結石が形成される詳細はまだ不明な点が多いが、尿中でシュウ酸とカルシウムが飽和状態になることで形成される事が分かっている。


シュウ酸とカルシウムが飽和状態にあると、何らかの原因で結晶核が形成された場合、その核を中心に結石が形成される。


健康な状態ではたとえ結晶核があっても防御機能が働き、直ぐに結石が形成される事はない。

しかし、結石ができるひとはその防御機構の働きが弱くなっていると考えられている。


尿中のシュウ酸の濃度が増加するとカルシウムとの結合も増加することが分かっている。


一方で、尿中のカルシウムの濃度が増えたからと言ってシュウ酸カルシウムの形成が増える理由にはならない事も分かった。


また、マグネシウムはシュウ酸と結合して可溶性の物質を作る。


これらの理由から、尿中のシュウ酸の量をコントロールする事が結石の再発防止には重要であると考えられている。

酸性尿中にみられる結晶は、ほうれん草などの食事で多くなる。


形はビスケット状で、赤血球と似ている。

ほとんどのものが水酸化カリウムで溶解する。
 

ロイシン結晶

淡黄色、同針状又は放射状の球状結晶。


重度の肝障害で出現。

チロシン結晶

無~淡黄色、針状結晶。


重度の肝障害で出現。

シスチン結晶

シスチン結晶

			
背景に見えるのは赤血球である。
六角板状の結晶。


先天性シスチン尿症でみられる。

小児の結石症の原因である。

重なっているシスチン結晶

			
シスチン尿症と呼ばれる遺伝性の患者にみられる結石である。


シスチン尿症は水に溶けにくいシスチンが尿中に多量に排出され、結石が形成される。


年齢が若くて何度も結石になる場合はシスチン結石の可能性が高いため、泌尿器科で検査を受けると良い。


検査は24時間蓄尿してそのアミノ酸量を計測することによって行う。

 

2,8-ジヒドロキシアデニン(DHA)結晶

菊花状、放射状の円形、球状結晶で見られる。


先天性アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症が原因である。

ビリルビン結晶

黄褐色の針状結晶。
肝炎、胆道閉塞時等による、黄疸尿中にみられる。

コレステロール結晶

一角が欠けた方形板結晶。

シスチン結晶にも類似する。


乳び尿、ネフローゼ症候群でみられる。

薬物結晶

投薬薬物と思われる。

薬物の多剤投薬により、同定は困難なことが多いとされる。

サルファミン結晶

			
サルファ剤(抗菌薬)を投与で、サルファミン結晶が作られる。
 

まとめ

以上で尿から出てくる結晶の紹介を終了する。


あらゆる物質が現れることを知っていただけだろうか?


自分が形態的に好みなのは、シュウ酸カルシウム結晶だ。

理由は、誰しもが分かると思うが天空の城ラピュタに出てくる飛行石とそっくりだからである。


本当に人体は面白い。

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